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消極損害

1 休業損害

1-1 有職者

1-1-1 給与所得者

給与所得者(いわゆるサラリーマン)が交通事故に遭い、仕事ができない状態になって会社を欠勤、早退、遅刻した場合、給与の全部または一部が減給されることがありますが、この場合、加害者はその減給分を損害として賠償しなければなりません。

給与所得者の休業損害は、交通事故が原因で休業したことによる現実の収入減が損害として認められます。例えば、交通事故のけがを治療するため1か月休業し、会社から1か月分の給与を受領することができなかった場合には、その給与相当額が損害となります。この場合、勤務先から休業損害証明書を発行してもらう必要があり、これによって現実の収入減を立証していくことになります。

また、有給休暇を使用したことにより現実の収入減がない場合でも、有給使用分の給与額について損害として認められます。

交通事故による休業により、賞与の減額や不支給、昇給・昇格が遅れた場合には、交通事故との因果関係が認められれば、その損害も認められます。賞与の減額や不支給については、勤務先から賞与減額・不支給証明書を作成してもらい、これによって賞与減額ないし不支給を立証していくことになります。

さらに、交通事故による受傷が原因となって勤務先を解雇され、または自主退職した場合は、無職状態となった以降も現実に稼働困難な機関を休業期間とし、稼働可能となっていても転職先が見つからなかった場合には、実際に転職先が見つかった時までの期間か転職先が見つかるまでの相当期間の休業損害が認められることがあります。

1-1-2 事業所得者(個人事業主)

交通事故が原因で休業したことによる現実の収入減が損害として認められます。

現実の収入減を立証するためには、交通事故に遭う前の所得を確定させなければなりませんが、事業所得者の場合、基本的には申告所得により認定されることとなります。

申告所得とは事故発生以前の確定申告書に基づく所得ですが、事業所得者の場合、実際には収入があっても確定申告を行っていない(無申告)、確定申告を行っていても現実の収入よりも少なく確定申告をしている(過少申告)ことも現実的には多くあり、このような場合に事業所得者の事故前の所得を算出することは困難です。つまり、事業所得者には、給与所得者の休業損害証明書のような損害額が明確になるような資料が存在せず、所得を明らかにするための拠り所となる確定申告書も実際の所得と齟齬が生じている場合が多いということです。

このような場合には、申告所得を超える収入があったことを証明することによって申告所得より高額の所得を交通事故前の所得として認めてもらうことができます。

一方、現実の収入減がない場合にも、事業の収入の維持が事故前に比べて大きな家族等の貢献に支えられている場合など特別な事情が認められる場合には、休業損害が認められることがあります。

また、事業所得者の場合、妻などの家族労働力を使って事業を営んでいることも多いですが、この場合は、被害者の申告所得額に対し、被害者が申告所得に寄与した割合を乗じた金額が基礎収入になります。

さらに、自営業者の休業中の固定費(家賃や従業員の給与等)の支出は、事業の維持・存続のためにやむを得ない場合には損害として認められます。

1-1-3 会社役員

会社の役員は、従業員などの給与所得者と異なり、役員報酬という形で報酬を得ています。そして、その役員報酬は、会社との経営を委任されるという関係に基づいて生じるものであり、原則として休業することにより減額がなされることが予定されているものではありません。

もっとも、現実には会社の規模等によっては、役員が休業することにより会社に損害が発生し、役員報酬の支給にも支障が生じます。

そこで、会社役員の報酬については、労務提供の対価部分と評価できる部分については、休業損害として認められます。一方、会社役員の報酬のうち、利益配当の実質を持つと評価される部分については、休業損害として認められないことになります。

1-1-4 いわゆる間接損害について

間接損害とは、会社の代表者や従業員が交通事故の被害に遭い,その結果,会社経営や労務の提供に支障が生じ、企業収益が減少した場合に、そこで生じた損害をいいます。このような間接損害についても、交通事故との因果関係が認められれば、請求することができます。

1-2 家事従事者

家事従事者の休業損害としては、平均賃金に相当する収入を基礎に損害が認められることとなります。

具体的には、家事従事者が女性であることを前提にすると、賃金センサス第1巻第1表の産業計、企業規模計、学歴計、女性労働者の全年齢平均の賃金額を基礎として、交通事故による受傷のため家事労働に従事できなかった期間につき認められます(最高裁判所昭和50年7月8日判決)

また、家事従事者に、パートタイマーや内職等による収入があった場合には、現実の収入額と上記女性労働者の平均賃金額のいずれか高い方を基礎として損害を算定することとなります。

1-3 無職者

無職者には、原則として休業損害が認められません。

しかし、交通事故発生時に、既に具体的な就職先が決まっていた場合には、就職予定時期から交通事故による受傷から回復して働き始めた時までの間に、就職予定先で得られたであろう収入については、休業損害として認められます。

また、交通事故発生時に、既に具体的な就職先が決まっていた場合でなくても、労働能力及び労働意欲があり、就労の蓋然性が認められる場合には、休業損害が認められます。その場合に、いくらの休業損害が認められるかについては、①就職時期(いつから就職ができたか)②収入金額(どのくらいの収入が得られたか)という点から判断されることとなります。この場合、交通事故被害者の方としては、できる限り具体的な事情を主張することが必要になりますが、一般的には、裁判例においては、平均賃金を下回る金額の認定がなされることが多いようです。

2 後遺症による逸失利益

基本的には、以下の計算式によって算出されます。

「基礎収入」×「労働能力喪失率」×「労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」

2-1 基礎収入

まず、ここで基礎収入と呼んでいるものは、逸失利益算定の基礎となる収入のことです。そして、その基礎収入は、原則として交通事故前の現実収入です。しかし、将来、現実の収入額以上の収入を得られるという立証ができれば、その金額を基礎収入とすることができます。

先述の休業損害の項目で述べたのと同様、給与所得者、事業所得者、家事従事者、無職者等に分けて考えることとなります。

もっとも、現実の収入額が、賃金センサスの平均賃金を下回っていたとしても、将来平均賃金程度の収入を得られる蓋然性があれば、平均賃金を基礎収入とすることも認められます。

2-2 労働能力喪失率

後遺障害による労働能力喪失の程度については、まずは、労働省労働基準局長通牒(昭和32年7月2日基発第551号)別表労働能力喪失率表を基準とします。

労働能力喪失率表
障害等級 第1級 第2級 第3級 第4級 第5級 第6級 第7級
100/100 100/100 100/100 92/100 79/100 67/100 56/100
障害等級 第8級 第9級 第10級 第11級 第12級 第13級 第14級
45/100 35/100 27/100 20/100 14/100 9/100 5/100

もっとも、上記表を基準としつつも、個別具体的な事情、例えば、被害者の職業、年齢、性別、後遺症の部位、程度、事故前後の稼働状況、事故前後の所得の変動状況、生活上の障害の程度等を総合的に評価して決められることとなります。

  • ① PTSD(心的外傷後ストレス障害)
  • ② 外貌醜状
  • ③ RSD(反射性交感神経性ジストロフィー)
  • ④ 高次脳機能障害

2-3 労働能力喪失期間

後遺障害は、一般的には、交通事故被害者が就労可能な期間中改善しないと考えられており、原則として、労働能力喪失期間は、後遺障害の症状固定時から就労可能な終期とされる67歳までとなります。

しかし、頚椎捻挫等のいわゆるむち打ち症の場合には、症状の消退の蓋然性や被害者側の就労における後遺障害の痛みに対する慣れ等の事情を考慮して、14級9号に該当する後遺障害であれば5年、12級13号に該当する後遺障害であれば、10年とされることが多いようです。

その他、以下のような後遺障害についても、労働能力喪失期間が問題にされることが多いようです。

2-4 中間利息控除(ライプニッツ係数について)

後遺障害による逸失利益は、将来にわたって断続的に発生するはずの収入を得られなかったことによる損害です。このように、将来生ずるであろう利益についての損害賠償請求を求めていくのですが、請求の内容としては、現時点において一時金の形で請求することとなりますので,その現在における賠償金額を算定するには,その利益が生ずるであろう時までの中間利息を控除しなければなりません。簡単にいうと、例えば10年後や20年後に得られるであろう100万円を現在の価値に評価し直すのに、必要な計算が中間利息控除(現在価値への引き直し)といわれるものなのです。

労働能力喪失期間の中間利息控除については、ライプニッツ式によるものとホフマン式によるものがあるが、ライプニッツ式(ライプニッツ係数を使用する方法)によるのが実務の大勢です。

3 死亡による逸失利益

3-1 算定方式

「基礎収入額」×「1-生活費控除率」×「就労可能年数に対応するライプニッツ係数」

死亡事案における逸失利益は、被害者が死亡しなければその後の就労可能期間において得ることが出来たであろうと認められる金額から、支出されたであろう生活費を控除し、就労可能期間の年数に応じた中間利息を控除して算定されます。

3-2 基礎収入

3-2-1 有職者
3-2-1-1 給与所得者

原則として、交通事故前の収入を基礎として算出します。

交通事故前の現実の収入が賃金センサスの平均額より少ない場合、平均賃金を得られる蓋然性があれば、平均賃金額が基礎収入として認められます。

なお、概ね30歳未満の若年労働者については、学生との均衡という考慮から、全年齢平均の賃金センサスを用いて基礎収入を算出するのを原則とするとされています。

3-2-1-2 事業所得者

自営業者、自由業者、農林水産業者などについては、申告所得を参考に基礎収入を認定するが、申告所得を上回る実際の収入がある場合には、それを立証することにより、実際の収入額を基礎収入とすることができます。

また、これらの方々については、所得が資本利得や家族の労働などの総体の上で形成されている場合には、所得に対する本人の寄与部分の割合によって基礎収入が算定されます。

さらに、実際の収入額が平均賃金以下の場合、平均賃金が得られる蓋然性があれば、男女別の賃金センサスの平均賃金を基礎収入として認められることがあります。

もっといえば、現実の収入が証明困難な場合、各種統計資料によって基礎収入を算定する場合もあります。

3-2-1-3 会社役員

会社役員の報酬については、労務提供の対価部分と評価できる部分については、基礎収入として認められますが、一方、裁判例は、利益配当の実質を持つと評価される部分については、基礎収入として認めることに消極的です。

3-2-2 家事従事者

賃金センサスを基礎収入算出の根拠として逸失利益を算定する手法が実務において定着しており、基本的には休業損害の際の基礎収入と同じように考えることになります。

3-2-3 無職者
3-2-3-1 学生・生徒・幼児等

学生・生徒・幼児等については、原則として、死亡した年の賃金センサスの被害者の属する性の学歴計・全年齢平均賃金が基礎収入として認定されます。

大学生や大学進学の蓋然性が高い被害者については、死亡した年の賃金センサスの被害者の属する性の大卒の全年齢平均賃金を基礎収入とすることもあります。

なお、年少女子については、基礎収入を女子労働者全年齢平均賃金とするのか、全労働者全年齢平均賃金とするのかという問題があります(全労働者全年齢平均賃金を基礎収入とした方が逸失利益の金額が大きくなることが前提です)。この点については、男女間格差是正のため、全労働者(男女計)全年齢平均賃金で算定するのが一般的です。

3-2-3-2 高齢者・年金受給者等

概ね65歳以上の高齢者で、死亡時に就労していなかった場合には、就労の蓋然性の立証があれば、原則として、死亡した年の賃金センサスの被害者の属する性の学歴計・年齢別平均賃金を基礎収入として認定されます。

被害者が死亡時に年金受給者であった場合には、年金収入について、逸失利益として賠償が認められるか否かは、①当該年金等の給付目的②拠出された保険料と年金等の給付との間の対価性③年金等の給付の存続の確実性等に鑑み判断がなされるといわれています。

3-2-3-3 失業者

労働能力及び労働意欲があり、就労の蓋然性が認められる場合には、再就職により得られるであろう収入が基礎収入として認められます。その場合、特段の事情のない限り、失業前の収入が参考とされることとなりますが、失業前の収入が平均賃金を下回る場合でかつ、平均賃金が得られる蓋然性が認められる場合には、男女別の賃金センサスの平均賃金を基礎収入とすることもできます。

3-3 生活費控除率

交通事故の被害者の方が死亡された場合、収入が得られなくなる一方で、被害者が生存していれば生じた経費がかからなくなります。生活費はその代表的なもので、その生活費は、逸失利益の算定にあたって控除されるのが裁判所の考え方です。

そこで、死亡による逸失利益を算出するときには、生活費相当分が控除されることになります。その生活費控除は、死亡した被害者の家族における役割などから、収入に占める生活費の割合という形で、以下のような基準で認定されることが多いです。

3-3-1 一家の支柱
  • ① 被扶養者1人の場合 40%
  • ② 被扶養者2人の場合 30%
3-3-2 女性(主婦、独身、幼児等を含む) 30%

※ なお、女子年少者の逸失利益につき、全労働者(男女計)の全年齢平均賃金を基礎収入とする場合には、その生活費控除率を40から50%とする裁判例が多いといわれています。

3-3-3 男性(独身、幼児等を含む) 50%

※ なお、兄弟姉妹のみが相続人の場合は、生活費控除率が高くなることがあるとされています(大津地裁長浜支部昭和63年3月10日判決参照)。

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